【はるくんに出逢うまで】
はるくんの母親である私は、生まれつき心臓が悪く、幼少期に弁の手術を2回しました。手術の後も、運動制限などはありましたが、普通の暮らしをすることができていました。私は小さい頃から子供なりに、自分は子供を持つことは難しいんだなと半分諦めていました。しかし、結婚し子供が欲しい気持ちが強くなり、周りのサポート、そして、信頼する医療スタッフの皆さんが妊娠出産に向けて治療・管理してくださったおかげで、妊娠中も心不全に陥ることなく、息子を出産するとができ、感謝の気持で胸がいっぱいでした。
【心雑音がする】
息子を出産して2日目のことでした。医師から、「息子さんに心雑音がするので、今詳しい検査をしています。」と言われました。胸がドキドキし、嫌な予感がしました。妊娠前担当医から、私の病気は遺伝しないと言われていたけれど、ずっと不安はありました。「大丈夫、大丈夫。。」と自分に言い聞かせていました、気を抜くと涙が溢れそうでした。
検査が終わり、医師から詳しい説明がありました。息子に見つかった病名は、弁の閉鎖不全、左室緻密化障害、卵円孔開存症、、、私と同じ病気も含まれていました。先生から説明を聞いている間、なんとか自分を保っていましたが、病室に戻ってからは永遠と涙が溢れてきました。息子に、旦那さんに、申し訳ない気持ちと、これからどうなってしまうのだろうという気持ちに押し潰されそうでした。神様って意地悪だなぁ、と何度も思いました。
【心不全で入院】
息子は体調が落ち着いており、無事に予定通り退院することができました。愛おしい息子の、慣れない授乳や寝かしつけなどで精一杯で、退院する頃には前を向いている自分がいました。
私自身の体調のこともあったため、実家にしばらくお世話になりながら、離れて暮らしていた旦那さんもお休みの日に会いに来て育児をしてくれていました。息子の通院をしながらも、不安はありましたがとても幸せな毎日を送っていました。
しかし、息子が2ヶ月を過ぎた辺りから、ミルクを飲む量が少なくなり、頻繁に大量に吐くようになってしまいました。赤ちゃんはよく吐くものと言われましたが、嫌な予感がして受診したところ、心不全となっており、そのまま緊急入院となりました。
心臓の状態から、息子はだいぶ苦しかったようで、無事に入院ができて少しホッとしている自分がいました。
入院した日、医師から言われたのは左室緻密化障害から拡張型心筋症に移行しつつあるという言葉でした。
家に帰り落ち着いてから、拡張型心筋症という病気を詳しく調べました。医療職であった私は、病名は知っていて、かなり重い心臓病だということも知っていました。調べると、心臓移植しか方法はない、予後不良、という言葉が並び、やっぱり、、と頭が真っ白になり、夜中に一人で泣き続けたのを覚えています。数日間、魂が抜けたような状態が続き、両親にもかなり心配をかけたと思います。しかし、両親、旦那さんの支えもあり、心臓移植について詳しく調べ始めました。渡航移植の可能性も考え、英語の勉強もしたいと参考書を買っている自分もいました。
【はるくん復活】
息子は医師や看護師さんの懸命な治療のお陰で、みるみるうちに元気になっていきました。最後の3週間は付き添い入院も許可されました。コロナの影響で、ずっと面会が週2回の10分のみだったため、とても幸せな息子との時間でした。息子は持ち前の生命力で、3ヶ月ちょいで退院することができました。
退院してから、10種類程度のお薬を飲みながら、元気にスクスクと成長していく息子に感謝しかありませんでした。
【3人での新生活】
退院後の通院でも、息子の体調は落ち着いていたので、息子と旦那さんの待つアパートに戻り、3人での新生活をやっとスタートすることができました。
息子は毎日元気に動き回っており、私達のほうが必死な毎日を送っています(笑)。先日無事に、1歳の誕生日を迎えることができ、この幸せな毎日に感謝する日々です。
【日本での臓器移植】
息子の病気が分かるまで、私は臓器移植について詳しく調べたこともなく、触れる機会もなかったように思います。たくさんの情報をネットやSNSで調べているうちに、日本での臓器移植についての問題がたくさんあることが分かりました。そして、その問題を少しでも解決していこうと必死に活動している方々がたくさんいることも分かりました。
今の日本では、移植を受けるまでに身体がもたず、亡くなってしまう子供がたくさんいる事実を知って欲しいです。私はこの事実を知った時、最先端の医療技術を持つ日本でそんなことがあるのか、、、と衝撃を受けました。しかし、他の国では当たり前のように移植ができ、生き延びている子供達がいます。
日本の倫理的思想、制度、医療機関やスタッフの問題、、たくさんの壁はありますが、みんなで声を上げていけば、難病の子供たちが安心して移植を受けられる、受けてからも幸せな生活を送られる未来は、きっとその先にあるはずです。
私達はそれを信じて、できる限りのことをしていきたいと思っています。
息子の心臓は、幸い今のところ落ちついていますが、進行性の病気のためいつ移植が必要な状態になるか分かりません。今後、私は息子のためならどんなことでもします。
少しでも、臓器移植に興味を持っていただけたら幸いです。
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